この記事では、現在技術的検討が進められている5G対応のWiMAXについて、どこよりも詳しく、かつ分かりやすく解説しています。
(公開されている事実ベースに基づいて執筆していますので、所謂、飛ばし記事ではありません)

新しい情報が入り次第、記事の内容を随時更新していきます。
5G対応のWiMAXはWiMAX3
5G対応のWiMAXはWiMAX3(仮称)です。
WiMAXは、IEEEとWiMAX Forumが技術的な規格の策定をしていますが、国際標準を策定しているのは、アメリカ・サンディエゴにある民間団体のWiMAX Forumです。
WiMAX Forumでの名称は、WiMAX R3.0と呼ばれ、これがWiMAX3にあたります。
既存周波数を5G(NR)用に転用
WiMAX R3.0(WiMAX3)では、WiMAX/WiMAX2+で使用している4G用電波(2.5〜2.6GHz)を、5G(NR)用に置き換えて使用する技術的検討が進んでいます。(NRはNew Radioの略です)
5Gでは、6GHz以下のSub6と言われる周波数と、28GHzなどのミリ波と呼ばれる高周波数をメインで使用しますが、4Gで使用していた一部の周波数帯域も5G用に今後転用されて行くことになります。

BWAとは、Broadband Wireless Accessの略で、簡単に言うとポケットWiFiのようなモバイルブロードバンド通信の事です。
WiMAXの種類とこれまでの進化
WiMAXは2009年にスタートして以来、現在もモバイルWiFiの中心的存在を担っています。
現在主役のWiMAX2+は、WiMAX Forumでは、リビジョン2.1なので、WiMAX2に+が付いています。
WiMAX2+はTD-LTEと互換性を持たせている為、従来のR2.0よりも0.1バージョンアップされています。

ちょっとしたトリビアですね。
サービス名 | WiMAX Forum名称 | 規格 | サービス提供時期 |
WiMAX | R1.0〜2.0 | 従来のWIMAX規格 | 2009年2月〜 2020年3月でサービス終了 |
WIMAX2+ | R2.1 | 4G(TD-LTE互換) | 2013年10月〜現在 |
WiMAX3 | R3.0 | 5G(NR互換) | 未定 |
2020年からWIMAX2+の帯域が拡張

2020年からWIMAX2+の帯域が拡張
WiMAXを運営しているUQコミュニケーションズは、これまで電波の帯域幅(データの通り道)合計50MHzを、WiMAX用とWiMAX2+用に分割して使用していました。
従来のWiMAXで使用していた域幅が空いた事により、WiMAX2+側にフル活用できるようになりました。
帯域が拡張されると、データの通り道は当然広くなるので、これまでよりも高速で大容量の通信ができるようになります。
WiMAX3のサービス開始はいつ?
WiMAX Forumによる、WIMAX3の標準化策定が2020年の上半期に完了します。
この後は総務省とUQコミュニケーションズ次第となりますが、5G対応端末の開発と販売や、通信基地局の5G対応設備更改などを考えると、早くても2021年か、2022年度からのスタートになるように思います。
進捗に関しては、通信会社各社や大学教授などでのメンバーで構成されている「新世代モバイル通信システム委員会」のワーキンググループで、定期的に問題点や進捗などの報告が総務省に対して行われています。
議事は一般に公開されているので、興味のある方は見てみると動向が掴めるかもしれません。
グループ企業のKDDIではauが先行でサービス開始

画像出典:KDDIプレスリリース
UQコミュニケーションズのグループ企業であるKDDIでは、auで既に5Gの商用利用が開始されています。
5G用としてKDDIは、3.7GHz・4.5GHz・28GHzの3つの周波数を取得しています。
KDDI(au)の5G基地局開設計画によると、21年度に10,622局、23年度には53,626局の開設予定が有り、国内キャリアでは最大規模の5Gネットワークが完成する予定です。
WiMAXでは、auのサービスエリアを使用する、HS+A(ハイスピード・プラスエリア)モードも搭載しているため、auのサービスエリアも品質に大きく関係してきます。
5G対応WiMAXの通信速度はどうなるのか?
5Gの通信速度は、最大で4Gの約100倍とも言われています。
とはいえ、5Gになって突然100倍の通信速度が出るかと言うと、そうではありません。
通信事業者は、通信設備を段階的に増強しながら回線速度を上げていく事になります。
特に、基地局とデータセンターを結ぶバックホール回線の太さが重要になりますが、まずは回線速度10Gbpsからスタートして、数年掛けて最終的に100Gbpsへと段階的に増速していく事になります。
先行で発表されているdocomo 5GのWiFiルーターの速度を参考にしてみると、やはり、突然100倍の通信速度にはなっていない事が分かります。
通信速度 | 下り最大 | 上り最大 |
5G用端末 Wi-Fi STATION SH-52A |
4.1Gbps | 480Mbps |
4G用端末 Wi-Fi STATION SH-05L |
988Mbps | 75Mbps |
5G主力技術のMassive MIMOアンテナ
Massive MIMOは、アクティブアンテナと呼ばれる種類の基地局に搭載されるアンテナで、WiMAXの基地局にも既に導入されています。
従来のアンテナと異なる点は、アンテナ内部の素子により、各ユーザーに占有の電波帯域が割り当てられます。
イメージとしては、今まで共用の道路を走っていたデータが、Massive MIMOでは、自分専用の道路を走るようなイメージです。
これにより、今までよりも低遅延で高速な通信が可能になります。

Massive MIMOアンテナ(64素子)
NEC製 Massive MIMOアンテナ
- docomo 5G用
- 帯域幅:100MHz
- 64素子

アンテナ内部には丸い素子が沢山詰まっています。
Wi-Fi 6(11ax)でWi-Fi速度も向上
ルーターとPCやスマホなどを接続する、Wi-Fiの電波も速度向上が行われています。
iPhone11から、最新のWiFi規格Wi-Fi 6(IEEE802.11ax)が導入されました。
Wi-Fi6の理論上の最大実行速度は9.6Gbpsで、Massive MiMOと同様に5G時代の礎になる技術です。
Wi-Fiアライアンス呼称 | IEEE規格名 | 最大実行速度 | 策定年 |
Wi-Fi 4 | IEEE802.11n | 600Mbps | 2009年〜 |
Wi-Fi 5 | IEEE802.11ac | 6.9Gbps | 2014年〜 |
Wi-Fi 6 | IEEE802.11ax | 9.6Gbps | 2020年〜 |
-
-
【プロが解説】5Gの登場でポケットWiFiの未来はどう変わる?
続きを見る
5G対応WiMAXのQ&A

一部僕の推測も入っていますが、良く聞かれる質問をお答えします。
サービス提供エリアはどうなりますか?
東名阪エリアから先行してサービス開始され、順次全国に拡大していく事になります。
従来のWiMAXエリアから、WIiMAX2+のエリアが拡大されて行ったように、サービス開始から数年掛けてエリア拡大していきます。
今使っているWiMAX端末で5Gは使えますか?
5Gに対応した端末が必要です。
現在流通している端末は4G用に設計された端末で、5G用の電波を送受信する事はできません。
先行でauの5Gサービスが開始されていますが、auの電波を使用するHS+Aモード(ハイスピード・プラスエリア・モード)であっても5Gの通信は利用できません。
月額料金はどうなりますか?
5G用に新しい料金プランの登場や、既存料金の改定があると考えられます。
3日で10GBの制限はなくなりますか?
3日で10GBルールは、現在の4Gサービス提供型に合わせて定められたルールです。
5G通信では、月額料金と同じく新たなルールが適用される事になると推測されます。
まとめ

まとめ
- 5G対応のWiMAXはWiMAX3
- 既存周波数を5G(NR)用に転用する
- サービス開始時期は、早くても2021年か2022年度から
- UQコミュニケーションズのグループ企業であるKDDIでは、auが先行で5Gサービス開始
- 5Gの通信速度は、最大で4Gの約100倍とも言われているが突然100倍の通信速度が出るわけではない。
- 5G主力通信技術は、Massive MIMOアンテナとWi-Fi 6(11ax)